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2020-04-21(Tue)

お知らせ


八重土竜(ヤエモグラ)と申します。
基本はぐだぐだしながら小説などを載せていきたいと思っています。


基本はさみしがりやなのでブロともとか募集しています。
どんどんコメントとか残していってください。
リンクフリーです。



書いてる小説の方は幼女4人におっさん1人の俺得の小説(オジコン)と、グリム童話をもとにしたダークファンタジー(グリモアグリム)を書いてます。

両作品とも左横にある目次バナーから目次に飛べるようになっています。詳しい説明(?)が欲しい方や、はじめから読みたい方はこちらからどうぞ。グリモアグリムの方も目次ページ作成中です。
あとがきの部類はすべて未分類のところに入れてあります。
それから、「くだらないこと。いらないもの」では日々起こったことを脚色して小説として載せさせていただいております。こちらは目次とかないのでカテゴリの方から飛んでください。すみません。

今月は5の倍数の日に更新します。本編更新はありませんが、おじこん短編の方が更新されます。(2019/01/07)

~近況~


エド・叛徒(はんと)様にバナーを作っていただきました。素晴らしいです。こんな素晴らしいバナーに負けないくらいの小説をかけたらと思います。(11月4日)

ブログの模様替え終了しました。お騒がせして申し訳ありませんでした。
それに伴いブログ名の変更です。私の中でいろいろあったんですが、私の都合で変えたことに変わりはありません。これからは『七人と透明な私』で一生懸命執筆活動していくのでよろしくお願いします。(11月19日)



ツイッターもやっております。https://twitter.com/yaemogura
更新情報や日々のつぶやきなどを載せています。

現在カクヨムで「魔物の奴隷」も連載中です。おじこんの世界観でのスピンオフ作品となっております。
https://kakuyomu.jp/works/1177354054887990667
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2019-04-18(Thu)

貝飾り


「何? わしに剣を教えてほしいって? なんだそりゃ」

「そうだよ。子供たちに教えるんだ。なぁ、いいだろ? 兄さん」

「この島で、剣なんか何に使うんだね。釣り竿か料理の勉強をしているほうがずっと有益じゃないか」

 グスタフの思わぬ申し出にハーディスが鼻を鳴らした。うまく笑えているだろうかということが気になって、話は半分ほどしか入ってこない。
 何をいまさらとも思った。こんなところでそんな言い争いをしなければいけないのかともまた考える。
 ハーディスはとうの昔に剣を捨てていた。  

「そんなこと言わずに、ね?」

「グスタフ、どうせお前はまた安請け合いしたんだろう?」

「そ、そんなことない!」

「なら、子供たちにしがみつかれて断り切れなかったんだろうな。子供たちはさぞ可愛かろう」

「……」

「そんなかわいい子供たちに、人殺しを教えるのか?」

「ひ、人殺しだなんて……」

 ハーディスの固く強い言い方にグスタフがひるむ。顔は何かを恐れるように引きつっていた。
 彼が読んでいた本を乱暴に机の上に置く。

「人殺しでないならなんだ? ん? わしらがそれを使って行ってきたことは人殺しに変わりないだろうが」

「……そこまで言わなくたって」

「これ以上もこれ以下も言いようがないだろう。わしらの技は戦場で鍛えられた。間違いないだろう? なぁ、中将」

「……」

「黙ることないだろう、なぁ?」

 ハーディスが何かを馬鹿にするように鼻を鳴らす。

「お前はまだあの軍服を捨てることができないくらいにはあの時が誇らしいのかもしれないがな、わしはあんなこともうしたくはないし、させたくもない」

 グスタフは黙ったままだった。 

「間違いなく、あの時あの子たちを殺してしまったのはわしらの技のせいだ。まだ学んでいなかったのか」

「……もういいよ、分かった。兄さんに頼んだ私が悪かったよ」

 震えた声で言うその言葉の裏にはどんな気持ちが隠されていたのだろうか。引き下がる気にも、争う気にもなれなかった。ハーディスにしたって、複雑な思いをそこに置いておくしか仕方がなかったのだ。 
 もう何十年もたっていたが、立ち直るには二人とも長く生き過ぎている。
 視線も合わせずに部屋を後にしたグスタフの耳元で見たこともない貝殻のピアスが揺れていた。



「グスタフさん、本当にハーディスさん来ないの?」

「ああ、都合が悪いみたいで……調べ物をしたいみたいなんだ」

「そうなんだ、残念」

 集まったのはそう多くない人数だったが、初めに剣を習いたいと言ってきた人数よりはずっと多かった。
 自分たちもなつかれたものだと思う。特に、ハーディスの人気は驚くばかりだ。本人も戸惑っているに違いない。子供にはあまり好かれない、怖い顔をしているのだと自分でも自覚しているものだから、ここまでなつかれることに抵抗を感じているのかもしれなかった。
 グスタフの剣に触ろうとしていた男の子たちに声をかける。

「こら、君たちにはまだ早いよ。手ごろな木の枝でも拾ってきなさい」

「木の枝じゃなくてこっちがいいよ」

「駄目だ」

「いいじゃん」

「駄目ったら駄目」

 グスタフが頑なに首を横に振る。この子たちにあんなものはまだずっと早い。釣り竿と、銛しか持ったことのないその手には重すぎるだけだ。
 こういう子供たちはからかってやるに限る。

「そうだね、じゃあこうしよう。あそこにある岩を持ち上げることができたら、私の剣を君たちに貸してあげるよ」

「ほんとに?」

「ああ、本当だとも」

 グスタフが穏やかにうなずく。
 その様子を傍らで見ていたラインが赤い目を大きく見開いた。

「意地悪しないでね?」  

「意地悪? ただ、ちょっとからかってるだけだよ」

 グスタフが指を鳴らすと地面から使い魔が這い出して来る。主人の言いたいことを察したのか素早く岩のそばまで行くと、その岩の下に隠れてしまう。これで絶対に意思を持ち上げる者はいないだろう。
 少年たちが岩に群がっているが、彼らの力ではそれはピクリとも動かなかった。
 あるいはグスタフでも動かせないだろう。

「あー、面白い。頑張ってるよ、あの子たち」

「意地悪しないでって……」

「意地悪じゃないだろ?」

 グスタフは楽しそうに笑っている。今にも声を上げだしそうだった。

「挑戦は一人一回までだぞ。各自、あきらめて木の枝を拾って来いよ」

 岩の方から抗議の声が飛んできた。
 どの子も林の方へ木の枝を拾いに行ってしまう。しかし、ラインは相変わらずグスタフのそばにいた。

「ライン、君は拾いに行かないの?」

「もう拾ってきたよ」

「おお、いい木の枝だね」

「ありがとう」

 ラインが緩くうなずく。視線はグスタフの剣に移っていた。

「グスタフのも素敵だね。かっこいい」

「そうだろう、ありがとう。君に褒めてもらってあの子も喜んでるよ」

 グスタフがラインの頭をくしゃりと撫でた。
 昔もよくこうして頭を撫でてやったことがあったなと思う。あの時の彼らは、今のラインよりもずっと小さなころから剣の扱い方を叩き込まれていた。
 教えていたのは自分と兄だった。それしか生きる方法がなかったというのは言い訳に過ぎないだろう。
 彼らには大きな海があったし、身についた技だってあるのだ。
 正直うらやましいという気持ちでいっぱいだ。
 自分たちになつく理由も、遠泳に出ていない元気な大人たちが自分たちしか残っていないということに尽きるのだろう。面倒を見てくれる大人がいなければ、彼らはつまらなくて死んでしまう。
 今日集まった子供たちも数年しないうちに両親に連れられて船に乗ってしまうのだ。
 グスタフがため息をつくように笑う。
 きっと船には乗れないラインが彼女の顔を覗き見た。

「グスタフの耳飾り素敵だね。それ、レグノフィスっていう貝殻よ」

「そういう名前の貝殻なんだ。知らなかったよ。ミシューたちがくれたんだよ」

「……ミシューが」

「うん」

 ラインがすっと俯いたので、グスタフが首をかしげる。

「どうかした? この貝殻嫌い?」

「そうじゃないよ」

 わかりやすいこの子をどうなだめすかしたらいいのかと迷ってるうちに、各々の自慢の剣を下げた男の子たちがグスタフを囲んだ。

「グスタフさん、教えてよ!」

「あ、ああ……」

 元気な少年少女に引きずられて、彼女の思考は中断せざるを得なかった。




「さぁ、今日はもう終わりだよ。日が暮れる前にうちに帰りな!」

「はーい!」

 水平線に太陽が半分ほど隠れたころになって、ようやくグスタフが座って休憩ができるようになった。
 思ってたよりも素質も体力もあった彼らに振り回されて、グスタフの体力は擦り減らされていた。彼らが毎日修練に励めば、魔物を倒すことくらい苦ではなくなるだろう。
 この場に兄がいたらグスタフの仕事は半分以下に減ったはずだった。 

「グスタフさん、明日も教えてね!」   

 と、ミシューがグスタフのもとへとやってくる。その言葉を聞いて、ほかの子供も明日の約束を取り付け始めた。
 勢いに押されてグスタフは頷くしかない。
 ラインがそれを離れたところから見ている。
 男の子の一人が走ってグスタフに近づいてきた。よく見れば一番素質があるように思えた男の子だった。

「グスタフさん」

「えっと、君は……」

「ヴァンピー」

「ああ、ヴァンピー。どうかしたかい?」

「今日のお礼」

 と、手を差し出してくる。
 受け取ってみると、貝殻に赤い紐のついたストラップだった。

「これは?」

「この島のお守りだよ。大人たちはみんな持ってるけど、グスタフさん持ってなかったろ? ハーディスさんの分も作ったのに、いないから駄目になっちゃうね」

「私が渡すんじゃだめなのかい?」

「作った人が作ったその日に渡さないと意味ないんだ」

「そうなのか、それじゃあ、兄さんはもったいないことをしたね」

 と、グスタフが笑う。
 そのストラップを自分の剣の柄にくるりと結び付けた。

「どう? かっこいいかな?」

「うん。グスタフさんに似合ってる」

「ありがとう。さ、時期に暗くなるよ。急いで家に帰りなさい。それとも、送っていこうか?」

「大丈夫だよ」

 と、ヴァンピーが妹を連れて小道の方へかけていく。彼の行くその先にランタンの光がぽつりと揺れていた。
 ゆらゆらと近寄ってくるその姿を見て、グスタフが声をかけようとした瞬間だった。

「遅い! いつまで遊んでる、グスタフ! 日暮れ前に帰ってくるようにいつもいつも……!」

「兄さん」

「あ、ハーディスさんだ!」

 と、グスタフとラインを迎えに来たハーディスが一瞬で少年少女たちに囲まれてしまう。
 今日はなぜ遊んでくれなかったのだと責める声が多かったようだが、彼はきっとそれに答えないだろう。

「そうだ、ハーディスさんにもこれ上げるよ」

 とヴァンピーがあのお守りを出して手渡した。

「これは?」

「この島のお守りだよ。大人ならみんな持ってる」

「わしがもらってもいいのか?」

「ハーディスさんにつくたんだよ? もらってくれないと困る」

「そうか」

 と、ハーディスが手の中にあるものをまじまじと見ていた。
 彼の手の爪は剣を持てない程に伸びている。
「ありがとう、大事にするよ」

 と、ハーディスが少し笑った。髪の毛の色とお揃いのそれを手首に巻き付ける。
 そして、緩い炎のともったランタンを掲げた。  

「さぁ、本当に陽が落ちるまでに帰ろう。年長者は小さい子と手を繋げ。家までしっかり送るんだぞ」

「はーい」

 太陽はもう半分以上も落ちていた。残りの光が一生懸命に光っている。小道の方は薄暗い。
 グスタフがラインの手を握った。


2019-04-15(Mon)

あなたに贈る


「見て! おっさん! 腕に乗った!!」

「おう、良かったな」

 動物は苦手なくせに、きっと好奇心に勝てなかったのだろう。金髪の少女が腕に大きな鷲を乗せて嬉しそうに見上げてきた。
 男、バラン・ジャージーはその頭をゆっくりなでると笑う。鷲が不思議そうに首をかしげていた。
 肩のあたりまで伸びたサラサラと揺れる金色の髪の毛がくすぐったいのか、それが近くを通るたび鋭いくちばしが開かれるが、捕まえたり掴んだりすることはなかった。
 ラーニャ・アラバーニの腕の上でわずかに胸を張って辺りを見回している。自分が彼女にふさわしいとでも言い出しそうだ。
 ラーニャが鷲に恐る恐る顔を近づける。真っ黒な瞳にあどけない顔が写りこんでいた。

「意外と可愛い顔してるんだ」

 という呟きに当たり前だとでも言いたそうに、大きな翼が広げられていた。
 鷲の本来の飼い主がくすくすと笑っている。

「どう? あなたも鷲飼ってみない?」

「いや、でも、俺は……」

「この子達は飛べるから持ち歩かなくってもいいし、旅のお供にもぴったりじゃない?」

「でも、ダメだよ」

 困ったような顔で首を横に振る彼女の困惑を何だと思ったのか、飼い主が他の檻を出してきた。

「少し小さいのもいるわよ? カラフルなのがいいって言うなら他のも用意できるし……」

 と、今度は飼い主の目がバランをちらりと見る。
 バランが肩をすくめた。

「いや、きっとこの子じゃ面倒を見きれないから。だから、遠慮しておくよ」

「あら、残念。お嬢さんと鷲、結構様になってたのに」

「かもな」

 バランがそう言ってラーニャに目配せをする。彼女のほうが頷いて本来の場所に鷲を戻した。

「バイバイ」

 と呟いて、おずおずと鷲に手を振る彼女の反対の手を引いてバランが歩き出した。
 しばらく歩いて、お腹が空いたというラーニャにサンドイッチを買ってやる。
 手頃な場所にあったベンチに座ってバランが尋ねた。

「鷲、欲しかったか?」

「なんで?」

「あー、いや……」

 ラーニャが咀嚼していた物をゴクリと飲み込む。

「別に欲しくなかったよ。どうせろくにお世話してやれないんだし、ずっと着いてこさせるのもかわいそうでしょ?」

「……そうだな」

「でもさ……」

 明るい声が男に降りかかる。賢そうな青い瞳がきらりと光っていた。
 バランも少しの我が儘なら聞いてやる覚悟だ。ようやく戦に揺れる土地を抜けたところである。彼女は小さい体でたくさんの我慢や、理不尽を乗り越えた。



「このお手紙って、どこまでなら届くの?」

「エリシア大陸内なら絶対にどこでも届くよ」

「本当に?」

「ああ」

 と、鳥を使った伝書を取り扱う店の店主が爽やかに笑う。自分の商品に相当の自信があるらしかった。

「なら、ミレスト国アラバーニ領のシェリオルカ・レオミストにこの手紙をお願いします」

「シェリオルカ・レオミストさんにね。確かに預かったよ」

「お願いします」

 ラーニャが苦心して書いた手紙をしっかりと店主に渡した。
 奥に引っ込んでいった店主の背中を見送ってバランがラーニャに尋ねる。

「手紙だけで良かったのか? 小包でもなんでも贈ればいいのに……」

「一介の剣士がレオミスト家のご令嬢に何を送れって言うのよ? 髪の毛とか?」

「……変なこと言うのはやめろよ」

「いいの。あれだけで。何にしたって絶対に誤解はされているわけだし。あれだけで私は十分なの」

「そうか」

「うん」




 店を出る頃には、空は赤く染まっていた。月が空に穴を開けるようにポッカリと浮かんでいる。
 バランの手をギュッと握ってラーニャが言った。

「それにさぁ、お……私が鷲を飼い始めたらきっと寂しくなる人がいるでしょ?」

「ん?」

 バランの夕日のように真っ赤な瞳とラーニャの真っ青な瞳がかち合う。
 なんともないとい言うような口ぶりでバランが返す。

「ヒスイか?」

「さぁ? そうかもしんないね」

 伸び始めた髪の毛をラーニャが揺らす。もう少ししたら二つに結わえるのも難しくはなくなるだろう。
 毛先が少しうねった金髪が、赤い夕日を受けて煌めいていた。
 バランが彼女のことをひょいと抱き上げてしまう。

「どうしたの?」

 と、彼女が犬歯を出して笑う。

「夕飯でも食いに行くか? 肉の美味しいお店があるんだってよ」

「マジで? 食いたい!」

「口が悪いぞ」

 バランが彼女のことを軽く揺する。反省の声はなく、少女の声ではしゃいだ歓声が上がるだけだ。
 気楽な二人旅であった。


2019-04-12(Fri)

往路 4

 人ごみの中、子供とは思えないほどの身長を手に入れたラーニャ・アラバーニが少し恥ずかしそうにあたりを見回していた。

「ほら、もっとくっつかないと落とすぞ」

「分かってるわよ」

 と、体がさらに密着する。
 さて、彼女は何を考えているのだろうか。きっと、こんな年になってまで抱きかかえられて歩くなんて、とか変な風に思われていないかとかくだらないことを考えているに違いないとバランは思う。
 すれ違った人と肩がぶつかり、ラーニャが揺らされてバランの首元に彼女の腕が回る。
 ぎゅっと抱きしめるような形になって、バランが彼女を抱えなおした。
 筋骨隆々な腕の上に少女を座らせて、男が歩くたびに少女の抱える食料もかさかさと揺れる。
 市場はいつにもまして賑わっているような気がする。あまりにも埋もれてしまうような人ごみに、バランがラーニャを歩かせるのは酷だと思ってしまったのだ。
 初めは一生懸命に遠慮していたが、ラーニャはとうとう押し切られる。男は少女の扱いがうまかった。
 男の目の前でラーニャの金色の髪の毛がさらさらと揺れる。緩く波打った毛先が男の顔に時折当たった。
 そういえば、昔は肩にもつかないくらいに短かったのにと一生懸命に繕っていた頃を懐かしく思い出す。
 彼女にとってそれは何の象徴なのだろうか。

「髪の毛、長くなったな」   

「伸ばしてるからね」

 唐突に尋ねたが、返事は思っていたよりも早く返ってくる。
 普通の声音であったが、青い瞳が伺うように男の顔を覗き込んだ。

「邪魔じゃないのか?」

「それ、そのままそっくり返すわよ」

 とラーニャがバランの三つ編みをぎゅっとつかんで引っ張った。

「いてて、手加減してくれ」

 と笑うバランにラーニャも楽しそうに笑い返した。
 二人の間にはたったのそれだけのことだ。


2019-04-09(Tue)

往路 3


「抱っこ」

「やっぱりな」

 予想はできていた。というか、こんなことだろうとは思っていた。
 いつもは森人種の友人を連れて行くくせに、今日の薬草摘みのご使命は力持ちの保護者だった。
 薬草でいっぱいになったカバンを二つも持ってやっているのに、遠慮はない。
 両手を掲げている彼女に首を振りながらも男は何ともなしにしゃがんだ。
 この一年で染みついた動きだった。
 わきの下に両腕を差し込んでよいしょ、と二人で掛け声を上げて持ち上げる。
 恨みを込めて軽く上下に揺さぶってやると「うう」と小さな唸り声をあげるだけだった。
 揺さぶったときにある違和感を覚えてバランが、眉間にしわを寄せる。
 今度はゆする意図などなく彼女の小さいままの体を二度ほど上げ下げする。彼女の発育は遅いようにも思われた。

「お前、少し重くならない?」

「そうかな」

「そうだって」

 バランの太い腕がフィア・ラッチェの体をぐっと抱きしめた。
 少し柔らかみのある体が男の固い腕の中にある。出会ったころよりも肉がついたような気がしないこともない。
 彼女の食事のことはほかの仲間よりも気をかけているつもりだ。同い年の子供たちよりも頭一つ分も小さい体はよく食べたが、摂取量に成長は見合っていないようにも思えていた。   
 腕を触って、今度は頬をつつく。やはり柔らかかった。タバコ臭い自分の指で触るのが申し訳なるほどだ。
 フィア自身は持ち上げられた猫のようにプラプラと揺られている。今の状況に特に考えることはないらしかった。
 ようやく抱きかかえる形になって歩き出す。
 空に浮いている風が動き出したころになって

「僕重くなった?」

 と、フィアが問うた。
 あまりにも唐突に言うものだから少しだけ返事が遅くなる。
 もちろん他意はなかった。

「……うん。ちょっと重くなった」

 あの鬱蒼とした森で出会ったあの頃よりも。人から奪うことしか知らなかったあの頃よりもずっと重くなったし、柔らかくなった。
 定期的に梳いているきついカールのかかった髪の毛が、夕日色のそれが美しい。


プロフィール

八重土竜

Author:八重土竜
八重土竜と申します

一月から三月までは五の倍数の日が更新日です。

内容は幼女4人におっさん1人のカオスな俺得小説と、グリム童話をもとにしたダークファンタジーを書かせていただいております。

まれにみる駄文でございますがよかったら読んであげてください。

ブロとも、相互リンク、いつでも受付中です。メッセージやコメントからお知らせください。
目次バナーの素晴らしい絵はエド・叛徒(はんと)様に書いていただきました。


※著作権は捨てておりませんので文章、絵の無断転載などはしないでください。

目次たち
ぼちぼち更新しています。幼女が出てきます。 ダークファンタジーです。ゆっくりとしたお話をお楽しみください。 残り物たち。 画像の説明文 病気のペンギンと夢の話 画像の説明文 日々起こったこと、思ったこと(現在リンクの制作中です)
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